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実践で学ぶブランディングデザイン:大人の隠れ家的ワインバー「Wine bar LUZ」

こんにちは、株式会社LUZ(ルース)代表取締役兼チーフデザイナーでもある浅水です。


この「実践で学ぶブランディングデザイン」では、これまでにLUZが手がけたデザイン事例を、コンセプトメイキングの段階から順を追ってご紹介することで皆さんにブランディングデザインの手順や手法をご紹介したいと思います。


Wine bar LUZ 店舗内写真

今回とりあげるのはこちら。

弊社が運営していた「Wine bar LUZ」のブランディングデザインです。


埼玉県越谷市南越谷駅近隣にあったこの店舗は、現在は営業を終了していますが、自社経営店舗ということで自由にブランディングをさせていただいたので、その事例を参考に取り上げたいと思います。




1. リサーチと分析

ブランディングを行う際に一番最初にすべきことは、徹底的なリサーチと分析です。

外部環境と内部環境を改めて認識し、それに内外ともに求められるブランドの確立を目指すのです。


よく環境分析フレームワークとしてビジネスで使われるものに、PEST分析、ファイブフォース分析、3C分析、SWOT分析などがありますが、店舗の所在地などによって環境が左右されやすい飲食業界ではSWOT分析が特によく用いられます。


SWOT分析とは、内部環境をStrength(強み)とWeakness(弱み)、外部環境をOpportunity(機会)とThreat(脅威)で、それぞれ分類して分析する方法です。


例えば、今回の「Wine bar LUZ」の事例では、調査の結果以下のような内容が明らかになりました。



Wine bar LUZの環境をSWOT分析した結果

2. コンセプトメイキング

分析した結果を元にブランディングの方向性を考える段階が、このコンセプトメイキングです。

通常、ディレクター、デザイナー、その他業界に詳しい方などが集まり数人でブレインストーミングをしながらアイデアを出し合います。


前段階で挙げた「強み」「機会」を確実に表現できるコンセプトと、「弱み」「脅威」をむしろプラスに見せるようなコンセプトの両方の面で考え、ベストなブランディングコンセプトを探ります。


飲食店の場合は

  • どんな人が常連になるのか

  • その人はなぜ他の店ではなくこの店に来るのか

  • 店に対しどんなイメージを持ってもらいたいのか

  • そのイメージに応えるためにどのような価値を提供するのか

を考えると良いでしょう。


例えば、今回の例では、このような方向性が見えてきました。


  • 常連になるのは30代〜50代くらいの大人、たまに20代がデートや記念日などに利用することを想定。

  • 近隣の飲食店とは一線を画し、本格料理やワインの楽しめるちょっとした高級店であると認識されることを目指す。

  • 入口のわかりにくさや周囲の賑やかさを逆手に取り、ここに来れば落ち着いて飲める、といった隠れ家的な店を目指す。

  • ここに集まるのは芸術などにも興味のある文化的な大人である、といった印象を形作る。


ブランディングの方向性について一通りアイデアを出し合ったら、最終的なコンセプトをわかりやすい文章で残しておくと良いでしょう。

これは、広告に使うキャッチコピーほど練られたものではなく、今後作っていくクリエイティブの指針程度で構いません。


今回の場合は以下のように指針を定めました。


本格スペイン料理とワインを楽しめる、紳士淑女の隠れ家「Wine Bar LUZ」


3. メインビジュアルによる視覚化

ここまで固まったら、次にビジュアルに落とし込みます。デザイナーの腕の見せ所ですね。


今回の場合、ロゴは既にあるものを使うことが決定していたので、分かりやすくメニューの表紙をイメージして画像を作ることになりました。


最初はPinterestなどを利用しムードボード(雰囲気の分かる資料を集約したもの)を共有しながら、手探りの段階からフィードバックをもらいます。


今回の場合は3パターン程度を制作し、その中でイメージにあったものをさらにブラッシュアップして仕上げていきました。


完成したものがこちらです。



提案時には以下のような説明を添えて説得感をプラスします。


【デザインコンセプト】

・店内の雰囲気に合わせた大人っぽいオレンジ色を基調に

紳士淑女を想像させるヴィンテージ感のあるイラストで高級感を演出

・スペインとの親和性が高く紳士のスポーツでもある乗馬関係のグッズをアクセントに

隠れ家的な地下への階段をイメージした幾何学的なモチーフを取り入れモダンな雰囲気に


この工程は、今後のブランディングの方向性を決める重要な工程です。


今回は自社の経営店舗ということもありスムーズにイメージを共有・決定することができましたが、

クライアントとのやりとりにおいては、互いが心底納得するまで何度でも修正する必要があります。


4.デザインの展開

前工程でブランドの視覚的方向性が決まったので、ここからは実際に店で使うものや工法に使うツールをデザインしていきます。


デザインするものが多岐にわたる場合は、全体をディレクションするアートディレクターの指示のもと、先ほど作ったメインビジュアルを共有しながら複数のデザイナーが制作にあたります。


クライアントに提案する際には、以下のようなモックアップを制作し、実際の印刷物をイメージしやすくする必要があります。


メニュー表モックアップ1
メニュー表モックアップ2
メニュー表モックアップ3
名刺モックアップ

イメージが固まったら実際にデータを作成し、印刷所に入稿したり、看板制作や内装の施工を依頼したり、Webサイトを制作したりと実際の店舗への実装を行なっていきます。


(印刷する紙や製本、印刷の形式などについてもどこまでこだわるか語りたいところですが、それはまたいつか…!)


例えば今回はメニュー表に力を入れたいということで、時間をかけて見ているだけでも楽しい、高級感のある映画パンフレットのようなメニューを作りました。


実際に制作したメニューは以下からダウンロードできます。



5.その他の工程

今回は主にデザイン部分の業務の手順紹介ですが、他にもマーケティング目線でのブランディングと併せてさまざまな工程が加わる場合があります。


例えば、店のブランディングに沿ったメニュー金額の策定、どのような広報ツールを使うのが効率がいいかの検証、SNSの運用戦略、時には試食会を一緒に行うこともあります。


これらの工程に、クライアント側のマーケター、弊社側のプロジェクトマネージャー、デザイナー、アートディレクターなど、さまざまなメンバーで関わり合い、打ち合わせを繰り返しながらクライアントと弊社が二人三脚で1つのブランドを作り上げていきます


また、デザイン物の納品が完了した後も、実際にブランディングの方向性が正しかったのか検証したり、改善点が見つかればそれを提案したりと、我が子を見守る気分で寄り添うのは永遠に終わらない工程と言えるでしょう。


まとめ

いかがでしたか?今回は、「Wine bar LUZ」の事例を交えて、ブランディングデザインの手法について説明させていただきました。


実際、企業や店舗のブランディングに悩まれている方や、あるいはブランディングデザインの手法を身につけたいデザイナーさんも多いのではないでしょうか?


この記事が、そんな皆様の手助けになれば幸いです。


また、弊社では、ブランドのコンセプトメイキングや、実際に必要な広報ツールを考えるところからクライアント様に寄り添い、予算や規模感にあったご提案をいたします。


弊社のクライアントは企業の方はもちろん、個人経営の店舗や、フリーランスで活動をしている方、地元のイベントオーガナイザーなど様々。

どこにデザインやブランディングにお悩みの方は、よろしければぜひ一度ご相談ください。


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